社会地質学会誌
第14 巻 第1/2 号 2018 年

論説

Mercury flow analysis in artisanal and small-scale gold mining operations in the Philippines
Myline D. MACABUHAY, Arlene GALVEZ, Jimbea LUCINO, Evelyn CUBELO, Jashaf Shamir LORENZO, Teddy MONROY and Richard C. GUTIERREZ
 フィリピンの零細小規模金採掘で使用されている水銀の量を実測し,国連環境計画(UNEP)の公表値と比較した.カマリネス・ノルテ,コンポステラ・ヴァレー,サウス・コタバトにおける採掘現場での測定によると,使用される水銀と回収される金の重量比の範囲は1.5 から149,平均は19.2 で,UNEP の公表値3.0 と大きく食い違っている.このままでは,水俣イニシャルアセスメントや国別行動計画が現実から遊離する虞もあるので,現場での測定値を増やし,より現実的な重量比を計算する事が重要と思われる.
amalgam, mercury flows, artisanal and small-scale gold mining, ASGM, Philippines, UNEP

Mercury flow analysis in artisanal and small-scale gold mining operations in the Philippines

調査・技術報告

潮汐卓越環境における浚渫窪地の埋積に関する効果の評価
秋元和實・矢北孝一・島ア英行・三納正美・柴田成晴
 流れが緩慢な沿岸域では夏季に貧酸素水塊が発生しやすい.このため,沿岸の各地で,浚渫窪地の埋め戻しが行われている.しかし,浚渫窪地の埋め戻しは流れの速い沿岸域でも行われている.このような海域での埋め戻しの効果は未知であり,検討が必要である.
 潮汐が卓越し底層流が速い有明海において浚渫窪地の環境を調査した結果,窪地の最深部でも強い鉛直循環によって溶存酸素は貧酸素の基準値 (4.3mg/l)より高く,速い底層流によって貧酸素水塊の発生原因となる有機物の堆積は認められなかった.
 したがって,速い底層流で海水と堆積物が攪拌される浚渫窪地では環境修復の必要はなく,その埋め戻しは経済的損失と考えられる.
Environment assessment, Geography, Oceanography, Hydrodynamics, Dredged hole, Ariake sea

潮汐卓越環境における浚渫窪地の埋積に関する効果の評価