地質汚染−医療地質−社会地質学会誌
第11 巻 第3/4 号 2015 年

報告

人力小規模採掘の管理における非政府系組織の役割 ―フィリピンの事例から― 
村尾 智
人力小規模採掘の管理については,各国政府とも法律を整備し技術支援を行うなど,長年にわたって対策を講じてきた.しかしながら,環境保護については大きな進展が見られない.特に,金の採掘・製錬(ASGM)を行う現場の周辺では,相変わらず水銀汚染が進行している.少なくともASGMについては,政府の対応に限界があると言わざるを得ない.今後は,包括的な施策をとれる政府機関と地元の状況に詳しい非政府系機関との協働が必要と思われるが,国によってはすでに試行錯誤が始まっている.本稿ではフィリピンのカリンガ州ガアーン地区における事例を紹介した.
 artisanal/small-scale mining, gold, mercury, NGO, Philippines

人力小規模採掘の管理における非政府系組織の役割 ―フィリピンの事例から―

Challenges for the new institutional frameworks of land governance in transitioning Myanmar: A case study of the Dawei Special Economic Zone
Yukari SEKINE
最近のミャンマーにおける政治経済改革は,政府が制定した新しい土地計画と深く関わっており,土地法,経済特区法,経済アジェンダの3 つの方針に沿っている.過去のミャンマー政府は(圧政),強制,暴力的手段により,土地押収や人口移動等の土地計画を推進していたが,新しく制定された土地法は,従来のものと異なり,政治的にも経済的にもより穏健に行われるはずで,農村部に居住している貧困層からは,期待の眼差しが向けられていた.しかし,結果的には,官僚や既得権益を持つ富裕層が利益を奪い,新法は初期の目的を達せず,ミャンマーの土地問題は更に拡大してしまった.本研究では,ミャンマー南部(Tanintharyi)のダウェー経済特別区における貧困層の土地保有権について,3 つの観点から検討した.@土地所有権の立証書類の作成や形式化した土地権利について.A農村での大規模な工業開発について.B地価騰貴の予測について.この地区では,軍政時代から政府が土地没収を行ってきた経緯があり,貧困層の不安は解消されていない.また,土地の没収は続いている.最近の土地没収は,土地活用を最大限に利用する市場経済メカニズムの影響が大きい.なお,最近は,政府の手が届かぬ部分を埋めようとする市民グループの動きも散見される.
Myanmar, land governance, development, liberalization, Dawei, land confiscation

Challenges for the new institutional frameworks of land governance in transitioning Myanmar: A case study of the Dawei Special Economic Zone

寄書

ポスト冷戦期における日本による対インドシナ地域政策の展開―インドシナ総合開発フォーラムを中心に―
島林孝樹
 本報告では,1993 年 1 月に日本によって提唱された対インドシナ地域政策の 1 つである「インドシナ総合開発フォーラム」(FCDI: Forum for Comprehensive Development of Indochina)を取り上げる.FCDI の目的は,インドシナ地域開発に対して,多くの参加国や国際機関の関心を集め,開発に関する議論の場を提供することであった.FCDI の閣僚会合は1995 年2 月に開催された.報告では,FCDI の提唱から閣僚会合の開催に至るまでの間に行われた政策担当者の議論の過程を跡付ける.その作業を通じて,ポスト冷戦期における対インドシナ地域政策の特質を論じることを目的としている.この目的を達成する上で3 つの視角を設定する.第1 の視角は,なぜFCDI という,インドシナ開発に関する議論の場を日本の政策担当者が提供したかという点である.第2 の視角は,FCDI を展開する上で,地域政策の具体的な中身として,どのような対応や方針がとられたのかという点である.第3 の視角は,なぜインドシナ3 国を一括して,地域を対象にした政策を打ち出す必要があったのかという点である.なお,依拠資料として外務省外交史料館で公開された資料,情報公開法に基づく開示請求によって入手した資料,および政策担当者とのインタビューから得た情報を用いる.
インドシナ総合開発フォーラム(FCDI),対インドシナ・メコン地域政策(Regional Policy toward Indochina/Mekong),ODA 援助政策(ODA Policy)

ポスト冷戦期における日本による対インドシナ地域政策の展開―インドシナ総合開発フォーラムを中心に―

A review of the monitoring small scale mining by modern satellites 
Ryoichi KOUDA
宇宙からの地球監視において,衛星群(satellite constellation)を用いるリモートセンシングが近年の傾向である.50mから30m の地表分解能を持つ中分解能センサのいくつかは無料ダウンロードで活用できる.5m から25cmの地表分解能を持つ高分解能センサは,詳細がわかるが有料なことが多い.5mから1mの地表分解能を持つセンサの一部は無料公開されているが,使用状況自身を監視され,データ提供社の契約企業に各個人の使用状況をシェアされる問題がある.米国地質調査所(USGS)は,アフリカの小規模鉱山の監視に高分解能センサを用いた事例を公表した.また,本報告でも,試みにベトナムのボーキサイト採掘場所に隣接するアルミナ生産工場のランドサット衛星画像(地表分解能15m と30m)の時間的変遷を処理したので,事例として紹介する.
 ASM (Artisanal Small scale Mining), Satellite constellation, LANDSAT, World View

A review of the monitoring small scale mining by modern satellites