社会地質学会誌
第16巻 第3/4号 2020年

論 説

高レベル放射性廃棄物地層処分の背景と社会的受容性について
竹内真司・師岡愼一・勝田正文・松岡俊二
 我が国では,原子力発電所から発生する高レベル放射性廃棄物の地層処分については,2000 年に地層処分の実施主体(原子力発電環境整備機構)が設立され,約20 年経過した2020 年10 月に北海道寿都町および同神恵内村が文献調査の受け入れを表明したものの,次段階調査の受け入れについては,道知事は否定的な見解を示すなど,先行きは不透明である。学生を対象に地層処分の社会的受容性を阻害する要因についてのアンケートを実施した結果,安全評価の不確実性や変動帯に位置する日本における地層処分の実現性などが技術的な阻害要因として上位を占めた。本論文では,国際的な議論の中で地層処分が選択された経緯を概説するとともに,阻害要因に関するこれまでの研究開発に基づく知見について説明する。さらに地層処分に関する対話を促進するため,中立的な立場にある組織による,フラットでかつ冷静な対話の場の必要性について提案する。
high-level radioactive waste, geological disposal, social acceptance, Technical Aspect, Impeding Factor

高レベル放射性廃棄物地層処分の背景と社会的受容性について

陸上鉱山のズリ風化に伴う鉱物相変化:山形県内の2 鉱山の比較
林 世峻・初川 悠・中島和夫・湯口貴史
 本研究では、鉱山のズリから採取した鉱石について、表面の風化過程を観察し、分解と溶脱の過程を調査した。試料は山形県の西川町、西山鉱床地域に位置する代表的な村山鉱山と尾花沢市福舟鉱山の二つの鉱床の鉱石を扱い、XRD・EPMA 分析と河川のpH 測定を行い、比較検討をした。村山鉱山では、豊富な黄鉄鉱が分解されることで黄銅鉱, 方鉛鉱, 閃亜鉛鉱などの分解が進み、それに伴いpH が下がることでAl が溶出して鉄明礬石系鉱物が多く生じていた。一方、福舟鉱山では黄銅鉱が多く、その分解によって銅藍や硫酸銅が多く沈殿していた。
 同時代の同じ鉱脈型鉱床であっても風化の様子が異なっており、これらの違いは鉱石中の硫化物・脈石鉱物の組合せに大きく関係している。 周辺の河川水は、鉱石ズリの含Fe 鉱物の加水分解反応や、それに伴う硫化物の分解により大きく酸性へと変化することが分かった。鉱山の処理計画を立てるには、特に黄鉄鉱の量に注目すべきである。
land deposit, weathering process, pyrite, sulfate minerals

陸上鉱山のズリ風化に伴う鉱物相変化:山形県内の2 鉱山の比較