地質汚染−医療地質−社会地質学会誌
第11巻 第1/2号 2015年

論 説

福島県猪苗代湖湖底堆積物に記録された歴史的な古地震・古洪水の記録
行木勝彦・井内美郎
2012 年に福島大学によって猪苗代湖の湖心域で掘削された約30m の湖底堆積物のうち,表層部1.99m について,軟X線写真暗色部の層準と粒度プロファイルの極大値層準に着目してイベント堆積物を識別し,その発生要因によりタービダイト層とハイパーピクナイト層に区分した.推定したタービダイト層の年代は,古文書記録の古地震年代と一致した.それらの古地震について,猪苗代湖における推定震度を算出したところ,猪苗代湖中心部における推定震度がXの下限(気象庁震度階級5 弱,計測震度4.5)以上の古地震が該当した.したがって,タービダイト層を発生させ得る歴史的な古地震の震度下限閾値は,震度Xの下限と推定される.また,ハイパーピクナイト層の推定年代は,古文書記録に残っている洪水年代と一致した.
Lake Inawashiro, event layers, historic earthquake, historic flood, turbidite, hyperpycnite

福島県猪苗代湖湖底堆積物に記録された歴史的な古地震・古洪水の記録

寄書

法地質学における分析機器を用いた検査法の発展
杉田律子
法地質学とは刑事・民事事件の解決に地質学の知識と技術を応用するものである.事件現場等から採取される表層土を中心とした地質学的な証拠資料は,被害者や容疑者と犯罪現場のつながり証明するために微細証拠物件として重要な役割を果たすことから,様々な検査方法が研究および開発され,異同識別に利用されている.本総説では,法地質学的証拠資料の機器分析による検査法について紹介する.本論が法地質学にこれまで関わってこなかった地質学関係者にとって,研究成果を新たな社会貢献に活用するきっかけとなれば幸いである.
forensic geology, trace evidence, instrumental analysis, DNA, color and particle size distribution, chemical analysis

法地質学における分析機器を用いた検査法の発展